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ある夜、こんな夢を見た

昭和初期の時代
マキという女性がいた

マキにはAという許婚がいた
Aはマキに優しかったが

偏屈者のBという友人がいて
マキはBのことだけは苦手だった
あるとき三人は町に出掛け
AはマキをBと二人残し
所用があると言って離れてしまった

僅か数分の離別のはずだったのに
運命が二人を分かつ

世にいう関東大震災
地が唸り歪み躍り

荒ぶる大地は平穏な日常を
一瞬のうちに殲滅した
当時は携帯電話どころか
置き電話さえない時代

震災の騒乱の中
Aは行方がわからなくなった

当時の行方不明といえば
もう死んだのと同じこと

絶望にかられたマキは
自害すら考えたが

そばにいたBの叱咤激励に
時間をかけて立ち直る

やがてBと結婚したマキは
子を産み育て
人並みの幸せを手にした
時は過ぎ
大きな戦争が終わり

Bはマキと子供たちに
白黒テレビを買ってきた

急かす子供たちと共に
スイッチを捻ると
映ったのは国会中継

そこには
あの男の姿があった

白髪が増え皺が寄って
顔形は変わっていたが

Aは政治家となり
国会で激を飛ばしていた

あの人が生きていたことを
何年もの歳月を経て知ったマキは

首を傾げる子供たちの前で
いつまでも嗚咽していた

 

【ライター紹介】

青島龍鳴 男性

電子書籍を中心に執筆活動中。
既刊本に

「But the world is beautiu」、「眠太郎懺悔録」シリーズなど。

めさき出版SNSにて活動中。

独特の味わいをもつ文体だけでなく、ガラケーで小説を丸々書き切るなど、多分に個性的な一面を持つ。

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