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部長は今日も残業していた。
部下の竹宮くんだけが部長とともに残り、書類を片付けている。

竹宮くんは仕事が出来るし見た目も悪くないが、いまだ独身でいる。
浮いた話も聞いたことがない。

早いところ彼女でも作って結婚して幸せになって欲しい。
……と、こんな残業に付き合わせてしまうようだから、婚活のために出掛ける時間の確保もできないのだろう。
部長は自省した。

「もう少しで終わるし、今日はもう帰りなさい」
竹宮くんを先に帰し、部長は最後に消灯して帰った。
夜遅く帰宅した部長がドアを開けると、竹宮くんと鉢合わせした。
「部長……お疲れ様でした!!」
威勢良く挨拶した竹宮くんは、足早に帰宅していった。
仕事が出来るし見た目も悪くないが、いまだ独身でいる。
浮いた話も聞いたことがない。
早いところ彼女でも作って結婚して幸せになって欲しい。

疲れ切った部長がのろのろとした動作で靴を脱いでいると、一人娘が
「お……お父さん、おかえり……」
と声をかけた。

呆れたことに、体にバスタオル一枚を巻いたきりだ。
「嫁入り前の年頃の女が、そんな格好で家をうろつくな」
一人娘にはつい小言をぶつけてしまう。
いつもなら言葉の一つも返してくる生意気な娘が、今回は珍しく淑やかに自室に帰った。こいつなりに、疲れきった父親に気遣いをする神経くらいは覚えたのかもしれない。

台所に置かれた冷えたカレーをチンして、口の中にかきこんでいるうちに、とんでもない違和感を覚えた。

疲れ切った部長の頭は、明らかにおかしい事象に気づくまでかなりの時間を要してしまった。

 

 

 

 

【ライター紹介】

青島龍鳴 男性

電子書籍を中心に執筆活動中。
既刊本に

「But the world is beautiu」、「眠太郎懺悔録」シリーズなど。

めさき出版SNSにて活動中。

独特の味わいをもつ文体だけでなく、ガラケーで小説を丸々書き切るなど、多分に個性的な一面を持つ。

 

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