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世界中で今、ナショナリズムの旋風が吹き荒れている――。

世界情勢に興味がないお若い方々でも、2chを覗けば踊る「ネトウヨ」なる言葉から、ここ数年、国粋主義者が湧いてるな・・・といった感想を抱くことがあるだろう。

201662日、そんな感慨を深めざるを得ない事件が、インドのウッタルプラデシュ洲・マトゥラーで起きた。

まずは、事の顛末をご覧頂こう。

カルト集団3000人の強制排除で衝突、23人死亡 インド

AFP=時事】インド北部ウッタルプラデシュ(Uttar Pradesh)州のマトゥラー(Mathura)で2日夜、市内の公園を約2年間にわたって不法占拠していたカルト集団およそ3000人と、強制排除に踏み切った警察が衝突し、警官2人を含む少なくとも23人が死亡した。地元当局が3日、発表した。

警察と地元当局によると、集団の一部のメンバーは銃や手製の爆弾で武装し、木の上から警官らを攻撃するなど、公園の一部を軍隊式に要塞化していたという。

 そうした状況を受け、警察側も実弾を使用。銃撃された警官2人を含む23人が死亡した。また、警官30人を含む80人が負傷したが、多くは銃弾を受け重体だという。

 ウッタルプラデシュ州の警察幹部によれば、集団のメンバー1000人以上を逮捕し、現場は封鎖された。この集団は2014年後半から公園内の土地270エーカー(約1平方キロ)を占拠し、数百のテントや木造の小屋を建てて居座っていたが、このほど当局が裁判所命令を得て強制排除が実行された。【翻訳編集】 AFPBB News http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160603-00000043-jij_afp-int

この事件、一見するとキケンなカルト集団による暴動のようだが、英文のサイトを確認してみたところ、鎮圧された団体が、興味深い主張をしているのが分かった。

https://en.wikipedia.org/wiki/2016_Mathura_clash

上記リンクのWikipediaによると、団体の主張として挙げられているのは、おおまかに下記の2つである。

The group demands a complete overhaul of the British-inspired political system,

(グループは、英国風の政治システムの完全なオーバーホールを要求します。)

オーバーホール・・・機械製品を部品単位まで分解して清掃・再組み立てを行い、新品時の性能状態に戻す作業のこと。

Another major demand of the group is replacement of the current Indian rupee with the Azad Hind Bank currency.

(グループのもう一つの主要な需要が自由インド仮政府銀行の通貨と現在のインドルピーの交換です。)

1つ目の「英国風の政治システムの完全なオーバーホール要求」については、インドがかつて英国の植民地であったことから推察して、(暴力を)擁護できなくとも理解はできる。

筆者も仕事柄、お世話になっている日本のエージェントから、インド間の取引について事情を聞かせて頂くのだが、インドは独立後も様々な英国様式をそのまま継続して採用してきたのだそうだ。

例えば仕事の契約書。

インドの契約書は英国様式なので、やたらと回りくどくて枚数が多いとのこと。

しかしながら、そんな重厚な契約書を交わしたところで、当のインド人の気質には何ら変わりはないのだ。

つまるところ、彼らは常にルーズ・・・もとい、マイペース。

契約書に記載された期限を過ぎても、清々しいほどおかまいなし!・・・なのである。

その時は(インド人と英国様式って、ミスマッチな部分も多いのだなぁ)と、苦笑いを浮かべた筆者であったが、そのミスマッチが生み出す歪みは戦後数十年の間に大きな亀裂となって、表層に表れてきているのではないだろうか。

この現象はわが国でも、憲法9条を巡る改正派と護憲派の対立に見て取れる。

憲法とは、自国の利益・保護だけではなく、周辺諸国と連携していく上で、それがどのように有効で、どのように戦争に対しての抑止力の効力を発揮できるかを再考する時期にきているのではないか?と、筆者は思う。

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話題をインドの事件に戻して、続いて注目するのは団体の第2の主張「自由インド仮政府銀行の通貨と現在のインドルピーの交換」である。

彼らは主張に、The group claims that the current currency has become “a slave of the dollar” because it is controlled by the Reserve Bank of India and the government. (それがインド準備銀行と政府によって制御されるため、現在の通貨は「ドルの奴隷」になっている。)と付け加える。

これが意味するのは、現在の基軸通貨ドルに対しての宣戦布告に他ならない。

リーマンショックを皮切りに、世界的不景気・原油安などが拍車をかけ、今やドルの権力は風前のともしびと言っても過言ではないだろう。

そして、ドルの信任が薄れる中起きたパナマ文書問題は、英国のポンドにもはっきりとNOを突きつけた。

ヨーロッパがユーロに統合されていく中、ポンドという脆弱な貨幣が耐えてこられたのは、裏での取り引き・・・英領圏で行われてきたタックスヘイブンが生み出した、莫大な闇資金のお陰だったわけだ。

そんな世界情勢の中、自国の通貨を強きものにしようとする試みは、決して的が外れた蛮行とも言い切れないのではないだろうか?

このカルト団体は、ガンジーと肩を並べるインド独立の父・ネタジ(スバス・チャンドラ・ボース)を敬愛していた節もあることから、陰謀論的思考をしてみると、この集団は果たして本当に野蛮なカルトであったのか。もしかしたらインド政府に対する政治的クーデター未遂だったのではないのだろうか・・・などといった感想が念頭に浮かぶ。

しかしながら、この団体が何であれ、掲げる主張が正しいものであったとしても、暴力を伴った主張の行使は必ず悪と定義付けられるのがオチだ。

そして、現行の旧体制の組織の中で、甘い汁を吸う者たちや、それに従わなければ生活がままならない者たちからは、決まって排斥の対象とされるだろう。

次回は、ナショナリズムの行く末、パンチャーヤットシステムから、小さな政府を考えるをお送り致します。来週土曜更新予定です。

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