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※今回の投稿には、少々ショッキングな画像が含まれます。

長年共に連れ添ったものと別れる――。

そう聞いて、皆さんは何を連想されただろうか。

車の買い替えに、引越し。離婚・・・などなど。

様々なシチュエーションが浮かぶところだが、今回お話しするのは「肉体の一部との決別」についてである。

先日、知人が入院したことを知った筆者は、急いで事情を知る人に接触し、状況の確認を取った。

「どうやら彼女、糖尿からくる感染症で、足を切らなければならないようだよ」

唐突にそう告げられ、一瞬固まった筆者であったが、すぐにこう言い返した。

「ああ、そうなんだ。よくあることだよね。手術よりも、本人と家族の心のケアが大切だね」

何故そのような「軽々しい」言葉が出たのかと申せば、実は筆者の実母も数年前、小さな傷が原因で感染症にかかり、右足を太ももから切断した経緯があったのだ。

今現在も、ご自分の体の一部との別れを医師に宣告され、絶望と恐怖のどん底に突き落とされたような思いをされている方々がいらっしゃるかと思う。

本日はそんな方々にこそ、読んで頂きたい記事である。

切断の際、痛みはあるのか?術後の傷跡はどんな感じになるのか?社会復帰はできるのか・・・?

患者の皆さんには、そんな不安を少しでも解消して頂きたい。

そして、患者を家族や身近に持つ方々もまた、心を穏やかに保たれることを切に願う。

筆者の母の場合。蜂窩織炎(蜂巣炎)

下肢を切断する理由はいくつかあるが、母の場合は「蜂窩織炎(ほうかしきえん)」と呼ばれる感染症だった。

蜂窩織炎は基本的には黄色ブドウ球菌などによる皮膚感染症である。感染部位は真皮から皮下脂肪組織である。表皮に感染した場合は伝染性膿痂疹となる。顔面、四肢に好発し、境界不明瞭な局所の発赤、腫脹、疼痛、熱感が急速に拡大する発熱、頭痛、悪寒、関節痛を伴うこともある。ここまでいくと血液検査でも炎症所見がとれるが、基本的には局所感染であるため、血液検査で炎症所見はとれないことが多い。深層の感染であるため、伝染性膿痂疹と異なり飛び火はしないと考えられている。(wikipediaより)

上記にあるように、初期症状は母も「発熱」だった。

風邪かと思い病院へ行ったところ、原因不明のままとりあえず解熱剤を出され帰宅。(この段階で、下肢には確認できるような異常は発見できず)

その日の夜、下肢に違和感を感じた母と共に右足を確認してみると、右下肢が熱を帯びながら腫れ上がっており、翌日の早朝再度病院へ連れて行ったが、「当院では手に負えない」と言われ、私立病院へと緊急搬送された。

下の画像は、搬送先の私立病院で即刻出してもらった症状のデータである。

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母ピンクの下線母の状況で、青の下線平均値だ。

上から・・・CRPというのは、こちらのサイト様によると、正常な血液の中にはほんの微量しか含まれない成分で、体内で炎症や組織細胞の破壊などが起こると肝臓で生産されて血液中に流れ出し、増加する。 症状の程度に比例して数値が上昇するため、炎症や感染症の指標として用いられるほか、病状を把握するためにも有用・・・とのこと。

母の場合、0.00~0.26とされる平均値を大幅に超えた、26.89という数字が見て取れる。

その下の血糖(その時の血糖値)、HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー。過去1~2ヶ月における血糖値)もかなり高めで、白血球の数値も異常を示しているのがお分かりになるだろう。

母は、この時点で蜂窩織炎(ほうかしきえん)と診断され、抗生物質の投与が開始されたのだが、さらにもうひとつ、重大な問題が浮上したのだ。

それは、

MRSAである。

メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(メチシリンたいせいおうしょくブドウきゅうきん、Methicillin-resistant Staphylococcus aureusMRSA)とは、抗生物質メチシリンに対する薬剤耐性を獲得した黄色ブドウ球菌の意味であるが、実際は多くの抗生物質に耐性を示す多剤耐性菌である。(wikipediaより)

要するにMRSAとは、抗生物質に耐性のある菌なのだ。

投与した抗生物質が全く効いていないことを確認した医師は、素早くMRSAに効果がある治療に切り替えてくれた。しかしながらこの時点で、すぐに右下肢を切断しなければならない状態にあり、筆者にはひざ下部分で切るか、太もも部分で切るかの2択が用意された。

ひざ下で切断を選んだ場合は、間接が残されるので、術後義足を装着して歩行する場合を考慮すると、本人は当然動きやすいだろう。

しかし、菌がすでにひざより上へ到達していた場合、再度切断手術をしなければいけないと脅かされ、母がすでに過去の脳梗塞の後遺症で右半身に麻痺があったこともあり、義足での歩行は断念し、安全を優先させ、太もも部分での切断に踏み切った。

筆者は母の介護歴が10年以上と長く、過去もこういった「究極の決断」を迫られることが多々あったが、こういった場面での患者家族の心境というのは、大変にいたたまれないものである。

この記事をお読みの読者の中にも、そんなご家族のかたがいらっしゃるかもしれないが、どうかご自分の選択を後から後悔したりなど、絶対にしないで頂きたい。どちらの道を選んだにせよ、それは恐らくあらかじめ定まっていた運命なのだと思うし、何より、あなたの決断が患者の命を救ったのだから。

術後の様子

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これは、術後4年目の状態だ。

話を手術した当時に戻すと、手術中は全身麻酔のため、本人には勿論痛みは無かったし、手術後も、点滴に痛み止めを混ぜたのは、その日の夜だけだったと記憶している。

母に術後の痛みはどうであったか尋ねたが、少しチクチクして気になったのは2日程度で、後はほとんど痛みは無かったそうだ。

傷跡もご覧の通りきれいなもので、触ってもツルンとしている。

現在の家での処置としては、普通の皮膚のように乾燥を防ぐためのクリーム(皮膚科で処方されたもの)を塗布する程度で、他に特別なことは行っていない。

残された左足については、小さな傷が無いか毎日チェックをし、指の間まで丁寧に洗浄した後、傷が無ければこちらも保湿する程度だ。

右下肢を無くし、術後は少し元気が無かった母だが、今は楽しそうにデイサービスを利用している。

まとめ

http://dl.med.or.jp/dl-med/tounyoubyou/diabetesl.pdf

こちらのサイト様によれば、糖尿病による足の切断は、年間約3,000件あるそうだ。

糖尿病に加え、他の感染症なども合わせると、年間かなりの数の方々が足を失っていることだろう。

自分の体の一部を失うのは、誰だって非常につらい出来事だが、感染症などの場合は、決断が遅れれば遅れるほど悪化してしまうケースもある。

筆者は切断を是非にと進めている訳ではないが、状況によってはどうか早めのご決断をされるようお願いしたい。

今は義足の技術も進歩しているし、術後あなたのまわりからは、ご家族をはじめ多くの人たちが手を差し伸べてくれるだろう。

患者さん、そして患者さんをご家族に持つ方々にとって、この記事が少しでも気休めになってくれれば幸甚である。

※病院のデータ及び下肢の写真は、本人の了承の上掲載してあります。

 

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