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「投稿を休んでいた訳」

1

 夏である。毎年暑い時期になるのは分かり切っている筈だが、こうも暑いと身も細る思いである(あくまでも思いであって実際に細くなればいいなと思っている)。

七月は休養と言う事で充電期間を頂き、たっぷりと蓄える事が出来た(蓄えたのは筋肉と脂肪がメインであり、金銭面的での蓄えは減っている。という事はまだ誰にも言っていないし、誰も小説のネタを蓄えたとも言っていない)。
 この時期になるとスポーツジムは沢山の人で賑わう様になる。賑わっていない場合はそのスポーツジムに何らかの問題がある(地縛霊が出やすい、あるいはスポーツジムではなく地域に根ざした営業が裏目に出ている鮮魚スーパー・ジムである、女将さんが常駐しているなど)。
 無論この時期からトレーニングを行ったとしても、見栄えが良くて素晴らしい身体がすぐ出来る訳ではないのだが、それでもやらずにはいられないと押し寄せてくるのだろう(私の書いた作品を買わずにいられないという時期があれば誰か教えて頂きたい。その時までネタを温めておく覚悟は出来ている)。
 自己鍛錬としての筋トレは非常に退屈なもので、誰にも評価をされる訳でもなく、内なる自分との戦いをじっと繰り返す、まさしく修行僧が如くである。と、ここまで書いたのが先月のお話でございまして、続きを書き始めたのが九月五日でございます。何故ここまで時間が空いたかと申しますと原因不明の止まらぬ鼻血と謎の頭痛によるところでございます。日常は至って普通のサラリーマンなのですが、会社からも長めのお休みを頂き、ようやく復帰できた次第。運動生理学を交えた効率的な筋トレ理論を、至極真面目に書き記そうかと思っていたのだが、急遽趣旨を変えて、以前書いた際に好評だったくだらないエッセイで力を抜いて楽しんで頂きたい(どちらも特に求められていないとか、有用な情報を書け、それより新連載の小説はどうなった、などのお声はまだ届いていない。届いていても今のところ私には伝わっていないので予定通り予定を変更する)。

2

 突然の病、身体の不調があった場合、読者諸兄は普段どのような対処を取るだろうか?
  無論、早めの診察を心掛けたり、遅く就寝していた場合は早めの就寝に切り替えたり(元から早い場合は、より早く、例えば午前中から就寝する)食生活の改善に勤しんだりするだろうか。
 余程潜在的な病状でない限り兆候は現れる筈なので、そういった対処も取れるし取ろうとするだろう。それは私の場合も例外では無いのだが、気付かぬうちに少しずつ病魔が襲ってきていたのである。
 八月も半ば過ぎ、以前から続いていた偏頭痛などお構いなしに酒を煽り、ハードなトレーニングを繰り返し(ハードかそうじゃないかは主観である)体重と筋量を増やす為に、一日三千から五千kcalを目指したオーバカロリーな食事を続けていた(この下りは今回の症状とはあまり関連性が無い筈なので読み飛ばして頂いても結構)。
 友人宅で酒を煽り、シン・ゴジラの鑑賞をして満足して心地よく休日を終えたまでは素晴らしい八月であった。
 翌日出社時間に間に合うように、iPhoneのアラーム音で目が覚めるとどうも息苦しい(都会の空気と世間様が私に向ける空気も息苦しい)。元々鼻炎持ちではあるが、ここまで息苦しい事があっただろうかと、左の鼻をほじくろうとしても、右手の人差し指がそこにある筈の左の穴に入っていかない。カリカリ、っとした感触が右手の人差し指から伝わってくる。 これは寝ている間に猫達にもっと美味い飯を寄越せという抗議の意思表示として、ドライフードを詰められたのでは無いかと邪推してみたが、そこまで器用なのであればもっと私に対しても器用に接してくれる筈だ(私は器用に猫達と接している)。
 少し力を込めると「バリベリ」と音を立てて穴に詰まっている何かが小削げ落ちた。それと同時に少し腫れぼったさを感じる鼻の奥から何かがドロリと零れ、慌てて手で拭うとそれが鼻血である事が確認できた。
” うわあ ”
 四十を手前にした中年男性が思わず” うわあ ”と呻く程の量で、軽くパニックに陥ってしまった。パニックに陥りそうな時は慌てず行動しなさいと子供の頃に教えられたが、予期せぬ量の鼻血が寝起きに出てきて既にパニックに陥っている際の対処法は教えられていないので出てきた” うわあ ”なのだろう。外傷が無いかと確認してみたが、やはり紛れも無く鼻の奥から出た鼻血で安心した(ここで安心している時点でパニックになっている事は明白なのだがこの時は気付いていなかった)。鼻血に気を取られていたのだが頭痛もかなり酷い(頭痛で目が覚めていない時点でどうかと思うが、この時はまだ気が付いていなかったし今も気が付きたくない)。
 とにかく不足の事態が起きた時は冷静な行動が求められる。先ずはタバコに火を点けて落ち着かねば。しかし鼻血を拭ったままの手でタバコを持ってしまった為、ベットリと血がタバコに付着してしまい、ポロポロと滑ってしまう。ああそうかそうか、先ずは血を拭かねばなるまいとティッシュで拭おうとしても今度は手にティッシュが付着してもう手がボロボロになってしまっている。これはタバコどころではないと洗面所で手を洗おうとした際に初めて自分の顔見て愕然とした(基本的に毎日鏡を見る際に愕然としている。何故世の中には真実を移す鏡が無いのか、など)。
 顔の左下半分がベッタリと鼻血で覆われており酷い事になっている。この時の心理描写を上手く書ける力量があれば、もう少し説得力がある小説が書けるのになどと考えながら顔を洗ってみるとやはり外傷は見当たらなくいつもの顔であった(何かの手違いでオーランドブルーム、あるいはジェイソンステイサムの様な顔になっていればもう少し説得力のある小説が書けるかも知れないが、熟考してみたが特に小説に関してはやはり変わらないだろう)。
 これだけ大量に鼻血を出した経験は大人になってからは無く、季節外れのバレンタインチョコがトラック三台程届いて貪り食うといった行動もしていない事から(残念ながら未だにトラックで届いた事も無ければバレンタインに大量のチョコを食べるといった経験もない。したいかどうかと言われれば別の話だが私はバレンタインが好きではない事だけは記したい)これは何かの病気ではないかと言う結論に至った。ならば寝起きに予期せぬ量の鼻血を出して既にパニックに陥っている場合の対処を知らなくても何も問題は無い。後は会社に一報を入れて病院に行くだけだ。これで緊急時における理性的な新たな対処法が確立した。

3

 会社に事情を話すと、幸いな事に人手が足りているので休んでも問題はないとの返事を頂いた(このまま人手が足りている状態が続いてしまっても困るし、続いた場合はどうなるか聞いてみる勇気は無かった)。
 早速近くの病院へ行こうと準備をしたが、その間もポタポタと鼻血が止まらない。止むなしにティッシュを鼻に詰め(これ程ティッシュが活躍した日は最近無かった。ティッシュは偉大である)その上からマスクをする事で、平日の午前中から鼻にティッシュを詰めて出歩く奇妙な中年男性というレッテルを貼られる心配も無くなった(貼られた場合、今後の私の人生どんな影響が出てくるか興味が湧いたが、そんな興味が湧く時点でやはり冷静ではない)。
 幸いにも、以前診察をして頂いた病院がすぐ近くにある。ここは名医が常勤しているので何かあっても非常に安心だ(名医以外が勤務をしているのを見たことは無い)。
 受付で診察券と保険証を提示する。「本日はどうされましたか?」名医が常勤している病院は受付も素晴らしい。何があったかという質問の中に、どうして欲しいかという意味合いも含まれている様な気がする(どうにかして欲しいから来ているので、適切な質問であると言えよう)。
 多少寝起きにパニックになってしまったが、洗顔もしっかり終えてレッテルを貼られない様にマスクを鼻に詰めたティッシュも隠れている。それにここは病院だ。鼻血インパクトより凄い事が起きても名医が対処してくれる。落ち着き払っている私は慌てず紳士的な振る舞いでマスクとティッシュを取って説明しようとしたところ、再びドロリと鼻血が流れ落ちた。
「どうしたんですかそれ!」
 だからそれを聞きに此処に来たのではないか。

4

 数々の修羅場をくぐって来ているであろう中年の看護師は事情を話すとすぐ落ち着き、淡々と受付業務を再開した。流石数々の修羅場をくぐって来ているであろう中年の看護師だ。少年の看護師ではこうは行かない(老年の看護師の場合はもう何も見ても動じないだろう。寧ろ動かないかも知れないし、それは動けないだけかも知れない)。
「それでは名前を呼ばれるそちらの長椅子でお待ちください」
 院内には私しかいないので、とっとと診察室に入れてくれればいいのにとも思ったが、きっと名医ならではの様式美の様なものであろう。診察室内に立ち込める病魔を清めの塩などで払っているのかも知れない。で、あれば邪魔をせずじっと待つべきだ。
「藤井さん、お入りください」
余程優秀な医師なのだろう、儀式はあっという間に終わったらしく、待ち始めてから二十秒程で名前を呼ばれた。
 と、ここまで書いたのが八月の末だった。残念ながら診察の詳細は覚えていない。いや、覚えていないと言うと語弊がある。名医に診察して頂いたが残念ながら症状は楽にならず、他の若い名医に診察をして頂いたのは覚えている。その名医には最先端の医療機器で検査をして頂いたのも覚えている。体調を崩して約一ヶ月程(めさき出版ブログのお休みを入れれば二ヶ月以上)、人ならざる者として生活していたが(働かざるもの人ならずと、他界した筈の祖父がこの間言っていた気がする)、現在は人の様な生き物と認知されるまでは回復している。
 決して他人事とは思わずに、これを読んだ方は筋トレなどをして是非体調管理に備えて頂きたい。
 

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